スクールのコラム08  仕立てにも施される小さなサプライズ。フランスから日本へ


コラム8  

前回(4/8)のレッスンではビーズを拾うのを手伝って下さりありがとうございました。 さりげなく手をかしていただき嬉しく思いました。 手仕事の小さな配慮にも、「視界に入ったときのインプレッションを劇的に変える魔法」があるように感じます。




パリ市内のバスに乗っていた時、年配の女性に「マダム、どうぞ。」 と席を立った少年の姿が、あまりに自然でとても爽やかでした。メトロへの階段で「手伝いますよ」とトランクをさっと運んでくれる人。改めて素敵な街だなと 思いました。そんなかゆい所に手を添えられる様な日常の中で、いつしか自分も身体が動くようになりました。人々が当たり前にしていることでしたが、やって みると本当に清々しい気持ちになります。 





ある日、渋谷の階段を下りていると前方で年配の女性が重いトランクによろめいていらっしゃいました。ついいつもの調子でトランクに手を のばしてしまい、「お手伝いしますよ」と声をかけた時には、「まさか持っていかれるのかしら!」と不安に思われてしまったようでした。しかし、階段を下り荷物から手を離すと、感激の笑顔を見せて下さいました。まるで「世の中にこんな事もあるのね!」という様な驚きの‥‥!「こんな素敵な笑顔の方なんだ!」その表情がとても心に焼き付いて、まる互いにサプライズし合ったような一時でした。「手伝う時にはまず先に声をかけなきゃ。」と反省しつつも、その笑顔がしばらく頭から離れませんでした。 

 


そして数週間後、今度は自分がトランクを抱えて階段を下りようとしていると、「下まで運びましょう。今、お声がけ(週間で)するようにしてるんですよ。」と紺色の駅員さんか警察官の様な装いの方が運んで下さいました。この時は荷物が重く、トランク以外に鞄もあったので、「休まず下まで下りられるかな‥‥」と思った瞬間でした。たとえ業務の一環であってもありがたいなと、日本も変わっていくのかな。と感じました。 




 

小さな配慮やサプライズは、顧客の洋服の仕立てで言えば、その人の“希望や願い”を聞き、“言葉に出来ない雰囲気”を表現することなのかもしれません。また、仕立てながら“生地や素材の声“を聞く事。感じ取る事。そうした中に見えない部分の美しさが出てくるようにも感じます。

ささやかな気配りにこめられた愛が視界に入ったときのインプレッションを変えていくのかもしれません。ヨーロッパの伝統的なオートクチュールの手仕事のエッセンスもこうした心遣いや愛の結晶であると言えるでしょう。





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